探求型の仕事(1/2) 〜 進化論の本質

ビジネスの世界でも「強いものが生き残ったのではなく、変化に適応したものが生き残った」というダーウィンの進化論が紹介されることがあります。企業としても変化に適応できるようにするということが求められる時代ですので、引き合いに出されることは多い話です。

 この進化論の本質について誤解をされている話があります。「キリンの首はなぜ長いのか?」という理由です。「高いところにある植物を食べられるようにキリンが首を伸ばした」と説明されていることもありますが、これは間違いです。そのように意志に従って首が伸びることはありません。何らかの遺伝子異常で首の長い子供が生まれた(突然変異)。そして、その時の自然環境では生き延びる上で首の長い子供の方が有利だった(自然淘汰)。ということで首の長いキリンが生き延びてきたのです。「突然変異」と「自然淘汰」の組み合わせが進化論の基本的な考えで、言葉は悪いですが、「できそこないの子供」が結果として種の存続には必要だったということです。


「多様性が大事」ということもこの観点から説明できます。狩猟民族の中には、リスクに無頓着で、どんどん獲物を追い求めて危険な場所まで出かけていく人がいるでしょう。そういう人は、新たな狩場や食料を発見できる可能性が高まりますが、同時に命を落とす可能性も高まります。リスクに敏感な人は、そういうリスクテイカーのお陰で食料にありつけるかもしれませんが、リスクを取らない人ばかりが集まると集団として餓死をしてしまうこともあるでしょう。同じ種族の中にも性格の多様性があることで、環境変化の中でも集団として生き延びられる確率が高まります。

この進化論を企業に当てはめて考えると、社会に必要とされるコアビジネスをしっかり収益事業に育てる。収益事業で得た収益や知見を新たな価値創造に活かしていくという循環が大事だということになります。例えば、グーグルの「20%ルール」という制度は有名ですが、業務時間内の20%を「普段の業務とは異なる業務」に当てて良いとされるルールで、Googleマップ、Googleニュースなどは、この制度によって生み出されています。Googleには20%ルール以外にも「心理的安全性の教育」や「人事考課と目標管理を分離する」など、自由な挑戦をしやすい環境が整っています。ビジネスの世界では「選択と集中」が大事と言われることも多いですが、それは短期的な収益向上を行う場合であって、長期的な生存競争には「発散と選択」が有効だという進化論の考えに通じます。

しかし、多くの大企業では事業の新陳代謝をしっかり実践していくことに苦戦をしています。リスクを減らし安定的に収益を稼いでいく活動と、収益を再投資によって数多くの失敗の中から新サービスを生み出す活動を同じ集団の中で両立させることは簡単ではないようです。オープンイノベーションなど新規事業を生み出すエコシステムを作ろうと様々な制度構築や取り組みがなされていますが、それらがうまくいかないのは、関わる人が、この進化論の原理を理解していないからかもしれません。

 どのような企業や部門に所属をしようと、一人一人が新しい挑戦をし、新たな能力を獲得することは組織力の基盤となります。過去にご支援をさせていただいた企業様の技術者会議に定期的に参加をさせていただく機会があります。その企業のステージは成熟期で、高いレベルで生産性向上に取り組むと同時に、技術革新に挑戦をしている組織としてのダイナミズムがあります。

 新たなチャレンジをしていく際に、しっかりとPDCAを回しながら成功させる力を全員で高めていこうという取り組みを続けられています。PDCAを回すためには、「設備のこと、製造に関わる現場の声をしっかり捉え、仮説を構築すること」「分業をするチームメンバーがプランの内容を一緒に吟味し、共通認識を作ること」「実践の中で、当初の仮説とのGAPを即座に捉え、軌道修正を図ること」「結果をしっかり検証して、学習したことを次の取り組みに活かせるようにすること」など、基本的な仕事の進め方を意図して実践することが求められます。全ての技術者にそういった基本が身につけば、その先で大きなチャレンジもしていけるようになります。「PDCAの回し方・仕事の進め方の探求」は、「安全」と同じようにややもすると疎かになります。安定的な業績を出せる環境では「惰性」に流されることもあります。定期的に点検し、意識を新たにし、ちゃんと挑戦することがなされており、大変心強く感じました。現状に甘んじることなく、進歩を続けて欲しいと思います。

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