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社長の力量が足りないと社員は育たないのか?(2/3)

(つづき)

【社長の力量十分の場合】

一方で、社長の力量(専門知識やスキル)が十分にある場合はどうでしょう?
社長からの指示や指摘は的確になります。
オーケストラ型のチームを作って、各社員の役割を定め、
統率された組織が力を発揮して成果を生み出していくという仕事の進め方ができます。

社長が目指している世界や全体像を示し、
各人の頑張りを的確に評価をしてモチベーションを与え続けることで、
社員は安心して持ち場の深掘りに勤しむことができます。
しかし、必ずしもこのパターンで社員が成長できるとは限りません。
「教える」度合いが強すぎると、社員は受け身になり、伸びが鈍化します。
与えられた範囲での仕事に満足し、周辺の勉強が疎かになる可能性もありますし、
自ら課題を探さないという場合もあるでしょう。ある程度の水準に達した社員には、
一緒に絵を描くところから参加させたり、広い範囲の仕事を設定していくことが必要です。
 
また、社長が「乗り越えるべき壁」として目標になっている場合は良いでしょうが、
先を行き過ぎて「別世界の人」になっている時には注意が必要です。
「下段者、上段者の腕が分からず」ということは良くありますが、
社長の常識が社員に通じていないということが生じます。
「意図が分かりません」「無理です」と意見を言ってもらえれば良いですが、
怖いのは、とりあえず聞いたふりをしたり、取り組んだふりをすることです。
そうならない二つのパターンは以下かと思います。
一つは、社員に挑戦する気質がある場合です。
「まず挑戦してみろ(任せた!)」と社員の常識の枠外の課題を与えても、
気質の良い社員は先ほどの「(情熱のある)力量不足の社長」のように、
周囲の社員の協力を得て乗り越えていくことができるでしょう。
社員は課題を乗り越えて社長の考えていることが少しずつ理解できるようになっていきます。
社員を成功させる確率が高いと「カリスマ型」のリーダーとしての存在感が増し、
どんどん挑戦させやすくなっていきます。
そのためにも、部下の状態・活動の進捗をしっかり見守り、
成功を担保できるラインから外れそうな時に警鐘を鳴らすことが必要なマネジメントになります。
「手を離しても目を離さない」子育てと同じです。

もう一つが、「未知の世界に踏み込む勇気がない社員」が多い場合です。
敢えて同じ立ち位置に立って、必要なプロセスを一緒に取り組むことが必須になります。
成功させられないのは、困難な状況で行動がストップするから(簡単に諦めるから)であり、
「なんでやらないんだ」「やってみろ」だけではうまくいきません。
「一緒に考えてみよう」「現場を見に行こう」と
ブレやすい社員の精神的支柱として行動を起こす存在になるのです。
「羊の群れの中のヤギ」の話はご存知でしょうか?
羊は群れで行動するという特徴があり、羊だけの群れだと今いる場所の草を全部食べても、
他に移ろうとせずやせ衰えていくそうです。そこでヤギを混ぜるのだそうです。
そうすると、ヤギは一頭でも新しい草地を求めて移動し、
それにつられて羊も移動するそうです。
このヤギのような存在が組織の中に必要だという話です。
自分の右腕や代弁者(ヤギの存在)が育つまでは、リーダーがヤギをするしかありません。
(つづく)

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