【アプローチ③:役割教育を施す】
スポーツチームでイメージをすると分かりやすいでしょうか?自律的と言っても、ポジションも自由、何をするも自由ではゲームに勝てません。ビジネスの世界で勝利をするためにも、創る、造る、売る、運ぶ、などの機能にしっかりと分解し、分業をすることです。ゲームプランに沿って、「各ポジションで何ができなければいけないか」「どういう能力を身につけないといけないか」を明らかにし迷いなく挑戦できる状態を作ることが役割設計のゴールになります。
ここで、自分の役割に集中するには「自分の役割」を知るだけでは不十分だということがポイントです。周りの組織の役割、全体がどうなっているか?が分からなければ自分の役割の重要性が認識できません。全体像が理解できていれば、状況に合わせて自らの判断で適応することも容易になりますし、部門を超えた応援や協力要請を出すこともしやすくなります。
そこで組織ライフサイクルや事業・商品の新陳代謝(エコシステム)の学習は必須になります。企業が社会への提供価値を高め続けていく上で重要になるのは「社会の変化に合わせて自分を変化させる力」です。その本質を考える際に、ダーウィンの進化論の話を共有しておきたいと思います。世間で誤解している人が多いのですが、「キリンの首はなぜ長いのか?」という時に、「キリンは高いところにある餌を取るために首を伸ばした」わけではありません。遺伝子のエラーで突然変異により首の長い子供が生まれた。その子供が環境の変化に対し生き残る力を持っていたというのが本質です。「突然変異」と「自然淘汰」の組み合わせで環境に適応してきたのが生命の歴史なのです。目的を定めて自ら進化をしたというより、出来損ないの子供が結果として強かったという世界です。
この生態系の仕組みを教訓にすると、企業が永続するためには、突然変異のような異常値を生み出すことも必要だということです。短期的な競争に勝つ上では「選択と集中」だけでも良いかもしれませんが、中長期的に集団として生存し続けるには「発散と選択と集中」の3ステップが必要です。次の図のような活動が企業の中で回っていることが必要です。
事業の新陳代謝を図るには、新しいサービスを生み出す「インキュベーション」〜可能性の高いサービスや技術を既存事業の中に組み込んでいく「トランスフォーメーション」〜しっかり普及展開し実りを収穫する「パフォーマンス」〜サービスの提供環境を整備し競争力を高める「プロダクティビティー」まで、人と利益を配分していきます。このエコシステムは、自社だけで完結する必要はありません。グループの中で増やしても良いですし、顧客資産や社会資産を活用してオープンイノベーションやM&Aで獲得する方法もあります。そういう観点を含め、役割設定をデザインすべきですし、適性に合った人員配置とそれぞれの活動に合ったマネジメント手法を使い分けることが必要になります。
この観点を持たないと、インキュベーションの部門は金食い虫として肩身の狭い思いをしたり、進化の芽が摘まれてしまいます。また、部門として取り組むだけでなく、グーグルの20%ルールのように、各人にこのサイクルを回させる方が良い事業もあります。役割教育は重要なのです。