先週、手帳の代わりにするため「iPadミニ」を購入した。
今まで愛着を持って手書きの「手帳」を使っていただけに、
簡単に手放せてしまったことが不思議な感じだ(まだ1週間だけど)。
今回切り替えられた理由は単純で、
「身体感覚的に違和感がなかったこと」に尽きる。
アップル製品の細部への拘りは周知の事実だが、
違和感がなかったのは、iphoneを既に使っていたからであったり、
サイズが今までの手帳と同じだからということも大きい。
結局、人間は身体性から逃れられない生き物なのだと思う。
身体感覚に訴える研究が進んでいるのを感じる事例は他にもある。
マクドナルドに行けば、「ビックマックを注文して商品渡すまでに
60秒以上かかったら無料券」なんてキャンペーンをやっているが、
実はこれ、待ち時間を短く感じさせる身体感覚に訴えたもの。
砂時計を目の前にボンと置かれて、
ちょっと「遅れて出てこないかな?」と期待をさせて、しっかり間に合わす。
お詫び程度にコーヒーの無料券を渡してリピート率を高める作戦。
個人的には、これはマクドナルドの業績回復に結びつかないと予想する。
顧客の待ち時間をゲームに変える発想は面白いが、
そのうちコーヒー券をもらうことに慣れた顧客は期待をしなくなる。
逆に残念な気持ちになったり、ビックマックを食べる習慣には至らないだろう。
オンラインゲームの世界でも
「いかに思考をさせずに課金のボタンを押させるか」という勝負のようだ。
詳しいことはよく分からないが、
ボタンを押す習慣をつけさせて、心理的なハードルを下げるということだ。
アマゾンのワンクリック注文も同じ原理に違いない。
売り手の立場で行けば、こういう事例から大いに学ぶことができる。
習慣によって身体感覚が影響を受けているとすると、
「顧客の習慣や習性に合わせる」とうことが汎用性の高い原則だったりする。
「顧客の習慣を作り出す」ことができれば、最強ということになる。
例えば、このタイプライターのキーボードの配列。
(「クワーティ配列」というそうだ)
人間のタイピング速度が上がるにつれてタイプライターの性能がついていけなくなり、
紙を打つアーム同士が絡まるなどのトラブルが多発したそうです。
そこでアームの衝突を防ぐために、連続して現れることの多いアルファベット同士が
なるべく遠くに配置されるようにデザインされたのが始まりだとのこと。
これを変えるだけのものは未だ存在しない。
「タイプライター」の話で思い出したので、補足を書いてみる。
鹿島茂さんという「レ・ミゼラブル百六景」などを書かれている小説家がおられる。
最近、映画で「レ・ミゼラブル」が話題になっているが、
本編に興味を抱くも、その小説のボリュームに尻込みしている人にはお薦めだ。
レ・ミゼラブルの情景を描いた挿絵を活用し、時代背景や考察を加えながら、
全体のストーリーが味わえる。絵の持つパワーを感じる一冊であった。
話がそれたが、
鹿島さんは今だにワープロの「書院」を使っているということなのです。
しかも、1986年に18万円で購入した代物を!
「『書院』が殆ど指の延長のようになっているので、
どうしてもパソコンに転向できない」とのことです。
良いかどうかは別として、その境地に至るまでiPadミニを使い込んでみたいと思う。