前回のブログでは「異論との接し方」として5つのコツを紹介しました。
その5つ目は、相手と価値観が違う時に『「テスト」にする』でした。
これは、「相手に自分の意見を試してもらう」というだけでなく、
「相手の意見を自分が試す」ということも含まれなければいけません。
新人が会社に入ってきて、
フレッシュな頭で常識外の提案をしてくることがあるかもしれません。
その際に、「それは間違っている。こうしなさい」と
全て一蹴してしまうリーダーの元でイノベーションは起こりません。
また、失敗経験をしない部下は、
「自分の意見はやっぱり正しいと思う」と
いつか試してみたい気持ちを残してしまいます。
そして、否定され続けると「意見しても無駄だ」と思考停止を招きます。
さらには、上司のコントロールの元、成功体験を重ねていくかもしれませんが、
失敗をしたことの無い社員が育ってしまいます。これはとても危険な事です。
いろんな意見を受け入れ「テスト」にすることは組織が強くなるうえで必須です。
アメフトの事例を一つ紹介してみたいと思います。
実は、アメフトにもワールドカップがあり、
日本は第1回大会、第2回大会と優勝しています。
日本代表チームは、選手が45人、コーチが10人という規模のチームで、
『我』の強い選手が沢山います。
そういう選手をまとめる秘訣を、
その優勝監督である阿部監督に伺うと、
返ってきた答えは「大きな円を描く」でした。
「全員をコントロールすることはできない。
自分の考えに染めると新しいアイデアが出てこない。
俺の仕事は、円からはみ出したやつを修正するだけで、あとは自由にやらせる。
その円が小さいとこじんまりとしたチームになる。
俺が大きな円を描くことが秘訣や」ということです。
これは、日本代表のように一流の選手をマネージする時だけに必要な事ではなく、
どんな組織であれ、基本は同じです。
阿部監督が素晴らしい点は、大きな円を描くだけでなく、
「いつでも代わりができる」ということを
セットで実践されていたことは補足しておきます。
どういう事かと言うと、
コーチが相談をすると常に的確な答えが返ってくるというのです。
その答えは「相手のビデオを見て研究をしていないと分からないこと」なのです。
アメフトが好きで、チームが好きで、自分で研究を重ねると、
自分の考えで進めたくなるものですが、
そこをぐっとこらえて円を大きく描くことを心がけられているということです。
『変化し続ける組織』では、
そこのリーダーが「円を大きく描く」ことが必要なのだと思います。
これはマネージャーだけでなく、個人として成長する上でも大事な視点ですね。
基本的に成功体験を積むと(失敗体験によっても)、円は小さくなります。
自分で大きく描こうとしないと、『変化し続ける』ことはできません。