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自律型組織へのチェンジマネジメント その3 (原則1:自律とは何か?)

【原則①:自律とは何か? 脱外的コントロール】

 「自律とはどういうことか?」を正しく理解しておかないと自律型組織は目指せません。分かりやすい例えで言えば、小学生が学習をする際に、「自らの関心に従って学びたいことを学習している」状態が自律であって、外部の力によって勉強をさせられている状態を他律と言います。学校の宿題は先生が与えます。これは外部の力とも言えますが、関心がないのに取り組んでいるとしたら「他律」であって、宿題の内容と自分の興味が一致し、自ら率先して取り組んでいれば「自律」です。この解釈で考えると、宿題の内容には興味がないのに、「提出をしないと怒られるから」という理由で自ら進んで宿題をこなしているケースは「他律」になります。親から「宿題をしなさい」と言われなくとも宿題をしているので「自律」しているようにも見えますが、宿題を与えられなければ、この子供は同様の学習をしないでしょう。一方で、関心のある子供であれば宿題などなくとも自ら同様の学習をし、探求を進めるでしょう。この違いは学習の進み方に大きな差をつけます。結局、外的コントロールによって動かされている人の発揮するパフォーマンスは自律している人に遠く及ばないのです。

 この「外的コントロール」はキーワードです。組織のメンバーが外的コントロールで動いているのかどうかを見ていくと、自律しているかどうかが分かります。「会社の目標を達成しなきゃいけない」と頑張っている人は自律をしているのか? 目標がなくとも頑張るのかどうかが判断基準です。つまり、頑張りたいことを成功させるために目標を活用しているのか、目標があるから頑張っているのかの違いを見れば分かります。

 ドラッカーが目指したマネジメントにおいても「自律」はキーワードです。ドラッカーはユダヤ人であり、ナチスドイツの迫害から逃れるためアメリカに移住します。ナチスの党員の非人道的な行為を目の当たりにし、組織が人間を思考停止に陥れてしまうことがないように組織運営のあり方を示したのです。全体主義・権威主義ではなく、個人主義・民主主義であるべきとの思想でデザインされています。ドラッカーの発案したMBO(Management by Objectives)は、個人が組織の管理統制によって駆動するのではなく、自らが目指すべき目標に向かって、個人の思いで創意工夫をすること、すなわち「目標によるセルフマネジメント」を目指したものでした。同じ目標でも、「組織から強制されたノルマ」と「理念やビジョンの具現化のために自ら目指すと決めた目標」では意味合いが全く違います。今の日本ではMBOの本来の思想は失われているケースが多いですが、「制度」だけに着目をし、「精神」を疎かにするとこのようなことになります。

 繰り返しになりますが、自律をしているかどうかは、「目標」の扱い方でわかります。
周りの目を気にせず、自分が目指すべきものとして目標を活用しているか?
「為すべきこと」にエネルギーをどこまで向けることができているか?
内向きの仕事にエネルギーを浪費していないか?
チームメンバーの状態を見てみて欲しいと思います。

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