昭和のマネジメントと平成のマネジメントのGAPを埋める(1/2)

最近、パワハラの課題解決のご相談を受けることが多くなりました。この問題を解消する上で厄介なことは、「ハラスメントをしている」とされる側の人間に自覚がないことです。「これくらい普通の指導だ」と厳しい説教を繰り返している指導者の下で、その指導に愛情を感じられず精神を病んでしまう方が増えているという構図です。昭和(右肩上がりの成長時代)の感覚を持ったままでもこれまでは通用したのですが、平成(成熟した市場で多様な価値観に合わせたサービスを提供する時代)には通用しないということです。

そのような組織を改革する際に大切なことは、「人が能力を発揮できる組織とは?」「そのような組織を作るために自分に何ができるのか?」という観点で同じ方向を向いた議論をすることです。

人が能力を発揮できる組織とは?

 マネジメントの原理原則に、「あるべきマネジメントは環境によって変わる」ということがあります。メンバーの能力や気質、その国や業界の文化、組織の成長段階によっても変わります。一方で、どのような組織であっても共通する原則はないか?という研究があります。

 その事例を少し紹介させて頂きたいと思います。一つはグーグルの事例です。グーグルは世界中から優秀な人間を集め、様々なプロジェクトに取り組んでいます。ところが、いくら優秀な人物であっても、所属されるプロジェクトチームによってパフォーマンスが大きく変わるということが起きていたそうです。そこで、「どのようなチーム環境であればパフォーマンスが高まるのか?」という調査がなされました。

 トップダウン型が良いのか、ボトムアップ型が良いのか、など組織構造に関する調査、職場で私語があった方が良いのか、黙々と仕事に打ち込んでいる職場が良いのかという調査、同じチームメンバーがプライベートでの付き合いがある方が良いか、公私分離が良いか、メンバーが同じ趣味を持っている方が良いのかどうか、などと様々な角度から分析をされたようです。しかし、結論としては、「共通の法則は見つからない」ということが分かっただけで、プロジェクトは暗礁に乗り上げました。しかし、そのチームは粘り強く調査を継続した結果、最終的に一つの「成功しているチーム共通点」を発見しました。

 その結論が何であったか?というと、「他者への心遣いや同情、あるいは配慮や共感がある」ということでした。「こんなことを言ったらチームメイトから馬鹿にされないだろうか」、あるいは「リーダーから叱られないだろうか」といった不安を、チームのメンバーから払拭するということがポイントです。心理学の専門用語で「心理的安全性」と呼ばれる雰囲気をチーム内に育んだチームでは人の能力が発揮されていたということです。

 報告書を書く際に、「こんなことを書いていいのかどうか?」と迷ったり、「こんなことを言ったら自分の評価が下がるかもしれない」と、人の目を気にして意見を変えたり、口に出せなくなると、本来持ち合わせている力が発揮されなくなるということです。どうでしょうか、自分は「心理的安全性」を持って仕事ができているでしょうか?

 素直にこの考えを受け止められない方もおられるかもしれません。これはアメリカの会社だからそうなのではないか?軍隊に心理的安全性などあるのだろうか?日本の企業でも当てはまるのか?という疑問が出るかと思います。しかし、私の日本企業の経験でも、スポーツチームでの経験でも、第一人者の意見を聞いても、この原則を否定する事例はありません。

 この話を捕捉する意味で、もう一つの話を紹介したいと思います。
 「アドラー心理学」をご存知でしょうか? 「嫌われる勇気」がベストセラーになり、日本でも注目を浴びている心理学です。アドラーさんは、「人の悩みは対人関係の悩みから生まれている」ということで対人関係の悩みを解消するための研究をされた方です。

そのアドラーさんは、「人が社会や組織の中で自らに誇りを持って生きるためには必要な条件がある」ということを仰っています。その条件を図に表すと、次のようになります。

 一つはグーグルの発見した原則と同じです。それに加え、「自分は役に立っているという感覚(自己効力感)」が必要だということです。
 いくら周りの人との関係が良好だと言っても、その組織集団の中でなんらかの役割・責任を持ち、チームに貢献できていないと、居心地が悪そうだと想像できると思います。ものすごい貢献でなくとも、その人の実力に見合った貢献をできていることが重要です。

 「自己効力感」が高まると周りの評価も気にならなくなりますし、自分の身を守る必要性がなくなりますので、「間違ったこと」や「できていないこと」を素直に認めて改善することができるようになります。

明日は、「そのような組織を作るために自分に何ができるのか?」という観点で書かせていただきます。

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