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同じ行き詰まりパターンからの脱却(1/2)

(1)組織課題の生じる原因

組織アップデーターとして、組織の課題解決をしていてつくづく思うことがあります。
それは、「当たり前のことを当たり前にする」ことで多くの組織課題は解決する。しかし、「当たり前のことができない原因は人間の心・認識にあり、多くの課題解決を阻んでいる」そして、「同じパターンで失敗をしたり、行き詰まっている」ということです。

例えば、トップが先頭に立って業績を伸ばしてきた成長企業。組織規模も大きくなってきて「次世代リーダー」にもっと役割を担って活躍をしてもらいたい。トップダウンのスタイルを改めて権限を委譲していきたい。経営者はそんな願いを持っているのだが、なかなか次世代リーダーから積極的な提案が出てこない。なぜか? というケースです。

探っていくと、これまでの厳格なトップのマネジメントスタイルで育ってきた次世代リーダーたちは「失敗を恐れている」ということがあります。頭では「リスクを取らないと成功はない。やってみなくちゃ結果は分からない」と理解していながらも、一歩を踏み出すには多くのエネルギーを要するようになってしまっている。ということがあります。理解の問題ではなく、心の問題です。

他にも、組織規模が大きくなってきて目標管理制度を導入した。毎期目標を決めて取り組むことで業績も伸びてきた。個人のスキルも伸びているようだ。しかし、なぜか心を病む人が増えたような気がする。社員もなぜか元気がないような気がする。

よくよく調べてみると、社員間のつながりが薄れて、助け合いが少なくなり、社員が孤独感を感じている。上司が自分の目標を達成するために、目標を使って部下の尻叩きをしている。そんな状況で、本質的な相談が上司にできなくなっている、ということが起きていたケースもあります。目標管理制度は個人目標が重視されていて、他者を応援する行動や組織内での見えない貢献が評価をされないことが一つの原因でした。

個人で結果を出している人が評価をされて幅をきかせるようになると、組織には個人主義がはびこり、いくらコミュニケーションスキルの研修を実施しても、行動変化は起きず、組織の状態は変わらなくなってしまいます。知識やスキルの問題ではなく、動機・認識の問題です。

こういった、「考え方や感じ方の癖」が組織パフォーマンスの発揮を阻みます。もちろん、基本的な知識やスキルなど専門性がないと事業は運営できませんが、専門性だけで強いチームは作れません。まだ見ぬ世界への挑戦を怖がる組織では、外部コンサルタントを入れて新規事業開発のノウハウを学んでも実践できません。最初の実践はコンサルタントに伴走してもらって成功したとしても、次からも頼ることになるでしょう。コーチングの研修を受けて社員が社員を育成する企業に変えようとしても、他者を助ける喜びを知り、それを奨励するリーダーがいない限り根付かないでしょう。根っこにある「考え方や感じ方の癖」から変えていくことが必要なのです。

(2)原因の分析

今、自分の組織にはどのような考え方や感じ方の癖があるのか?そんなことを分析してみると、組織課題の原因が分かってきます。

組織の考え方や感じ方の癖に最も強く影響を与えるのはリーダーシップです。その組織のリーダーの個性やマネジメントスタイルを反映しています。

マネジメントには大きく以下の4つの仕事があります。

① まだこの世に存在しないサービスや事業を構想し、魅力的な絵を描くビジョン創設の仕事
② ビジネスプランを確実に実行し、スピードを上げて結果を生み出す仕事
③ ビジネスの成功モデルを再現性高く、効率的に行える仕組みを構築したり、リスクへの備えをすることで事業を安定化する仕事
④ チームの価値観を組織に根付かせ、協力しあえる文化を生み出す仕事

しかし、これらを全て高いレベルで実現できるリーダーは滅多に存在するものではありません。どの経営者もいずれかの要素を強みとして企業経営をしています。

そんなリーダーのマネジメントスタイルによって、組織の強みも変わってきます。①に強みを持つ組織を「独創OS」②を「特攻OS」③を「管理OS」④を「仲間OS」と呼んでいますが、それぞれの特徴を持つリーダーの心の傾向を見てみると、よりこれらのOSについて理解ができていきます。

OSの心的傾向

縦軸は、発生した現象の受け止め方です。環境変化について「危機」「苦」と受け止めるタイプか、「快」「可能性」と受け止めるタイプかで分けています。横軸はその思いの発露の仕方です。左側は、自分の思いをもとに現実を変えていこうというパワーがあります。一方で、右側になると、現実が先に来て、その中でどうしようかと考えるタイプです。

「特攻OS」は左上です。「特攻OS」型のリーダーは責任感も強く、自分の役割はしっかり果たさないと気が済みません。「成果を出せる自分」「役割を果たせる自分」にプライドを持っていますので、できないことが許せなかったりします。仕事をやりきれない人を責め、部下のミスが目についてしまいます。他人の欠点やプランのマイナス点に目がいきます。即断即決をできる強みを持つ一方で、他者とのつながりを切ってしまうこともあり、仕事のできない部下を見切ってしまうこともあります。
そういった特徴を補う方法としては、自分の課題と相手の課題を切り分けるのではなく、「我々の課題」として一緒に取り組むスタイルで仕事をすることです。

「独創OS」は左下です。エネルギッシュで新しいアイデアを発想し、さまざまなことに可能性を感じて進んでいきます。自分の思いや構想に惚れ込んでいますので、その構想を支持してくれる人、自分に賛同してくれる人のことが好きです。自分の支持者のことを評価し、欠点が見えなくなる人もいます。気をつけるべきは、リスクが見えなくなる点です。マイナス意見を言ってくれる人のことを「分かっていない奴」として遠ざけてしまったり、ビジネスプランを良くするために指摘をしてもらっても「まずやってみなくちゃわからない」と取り合おうとしない人もいます。やがて「あの人に意見を言っても無駄だ」とアドバイスをもらえなくなり、孤立をすると失敗します。現状のリスクや課題について、「定期的に立ち止まって話し合う場を持つ」「自分に助言をしてくれる存在を作る」ことはこのスタイルを持つリーダーが大成功する上では欠かせないでしょう。

「管理OS」は右上です。冷静に物事を洞察する強みを持っていますが、リスクに目がいきやすい心を持っています。あらゆる可能性を想像することは成功する上でとても大切なことですが、全てのリスクに備えようとすると、スピードが遅くなったり身動きが取れなくなってしまいます。新しいアイデアやプランに出会ったときには、最初から拒否するのではなく、現実の中にある可能性に目を向ける癖をつけると良いでしょう。そして必ず実践テストを行なって確かめてみるスタンスをとることも有効です。そして、テストによって成功できる可能性を見つけることができるとこのスタイルの強みが活きてきます。成功確率の高いパターンを見出したり、無駄を省くきめ細やかなマネジメントで成功確率を高めていけます。

「仲間OS」は右下です。柔和で明るい性格の人が多く、物事を肯定的に楽天的に捉えます。チームメンバーの状態にも配慮ができたりするのですが、現状に満足しやすい特徴があります。結果を心配しない、結果に貪欲でないことから思考が浅くなってしまうことに注意が必要です。「なんとかなるだろう」ではなんとかならないことも多く、実践してから問題を発見するばかりではスピード勝負の競争に勝てないことも出てきます。しかしながら、本人的には「これで良い」と感じて幸せなので、行動を変えられないのです。そこを補う方法としては、目標やアクションプランを具体化して、それに沿って活動を進めることです。

(3)因果関係を理解する

このようなリーダーのマネジメントスタイルによって作り上げられた「組織の考え方や感じ方の癖」が組織課題にどのように影響を及ぼしているのか、その因果関係を理解すると解決の方向性が見えてきます。

因果関係

例えば、「新規事業や新サービスの開発が進まない」という課題を抱えている企業のOSを分析してみると、管理OSや仲間OSの要素が強く、大きなビジョンを打ち出したり、意思決定をして実行するスピードが遅かったりします。

また、「社員が育たない」という課題を抱えている企業のOSでは、特攻OSの要素が強く、「失敗は反省して次頑張る」というスタンスで、経験した失敗事例からの学習がなく同じ失敗を繰り返していた、という企業もあります。

こういった姿は、その組織メンバーにとっては自然なことに感じられるので、問題に気がついていないことも多いものです。問題に気がつかなければ「そこそこは上手く行くが伸び悩む」という同じパターンを繰り返すことになります。しかし、「そこまで深く追究しなくとも経験上なんとか経営できてしまってきた」企業では、自己分析を行なっていない、組織について勉強していないことがまだまだ多いと感じます。

もし、経営者として組織開発や組織変革を通じて社員をより幸福にしていきたいと願うなら、まず組織の現状を客観的に把握する他ないと私は思います。

(続く)

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