自律型組織へのチェンジマネジメント その9 (アプローチ4:目標を体系にする)

【アプローチ④:目標を体系にする】

 役割を定義しただけでは十分ではありません。それぞれが役割責任を果たすために具体的にすべきことは何か、行動への落とし込みが必要になります。そこで「目標を活用して、能力を引き出す」仕組みが必要になってきます。「自律型組織へのチェンジマネジメント その3」でドラッカーのMBOの話を紹介しましたが、本来、個々が組織の方向性に沿って目指したいことを目標設定している状態が理想的です。しかし、日本で活用されているMBOは人事評価と結びつき、本来ドラッカーが目指したMBOとは別物になっています。それは人間の性質からすると自然な現象であって。「評価をされる」→「人の目を気にする」「達成して評価を上げることが目的になる」→「野心的な目標設定をしなくなる」という現象は、米国でも同じように起きていました。また組織が大きくなると部分最適の目標が追求され、全社のパフォーマンスが上がらないという事態も生じます。

 そのような状況の中で、インテルのアンディー・グローブ元CEOはMBOを発展させた独自の目標管理手法を活かしインテルを飛躍させました。その目標管理手法をアンディー・グローブから学んだジョン・ドーアという投資家がGoogleなどの投資先を育成する際に確立したのがOKRという手法です。現在、このOKRという手法が自律型組織を作るのに役立つ目標管理の手法として日本でも普及してきています。ただし、「制度」「形」だけに着目して導入をしても成功は難しいでしょう。目標に対する考え方・感じ方を変えるような使い方をしていかないと、結局MBOが本来の目的を見失ったように、OKRも他律を助長するような使われ方になるでしょう。

 OKRとは Objective & Key Resultの略で、ワクワクする目標(Objective)とその目標の達成度合いを測定する主要な結果(Key Result)の組み合わせで構成されます。

OKR

アメフトチームだとこのような感じになります。

OKRアメフト

そして、OKRという目標活用手法を活用する際に外してはいけない原則は以下の4つです。

①一貫性(全社の目標体系に一貫性があり、自分のすべきことが深く理解できる)
②フォーカス(何でもかんでもにしない。分かりやすいものを厳選してシンプルに)
③ストレッチ(簡単すぎると面白くない。適切なストレッチを加える)
④トラッキング(定期的に進捗を確認し、軌道修正を行う)

①一貫性
 全社の目指すべき目標との繋がり、周辺の部署の目標が可視化できると、社内での協力も進みます。縦割り組織での分断が起こりにくく、全社で一丸となって、大きな目標に挑戦できるようになります。この目標は、全社>部門別>チーム別>個人別と個人に紐付くまで分解していきます。ノルマ文化が出来上がっている組織では、最初の年はリーダークラスでのみ導入し、リーダーが目標を設定する本来の意義や活用の仕方を身につけた上で部門に落とし込んでいくような丁寧なアプローチが必要になります。

②フォーカス
 「何もかも重要だというのは、何も重要でないというのと同じ」というようにOKRで設定する目標は厳選します。厳選して重要な目標にフォーカスをすることで、人のエネルギーは大きく発揮されます。仕事には「全力タスク:絶対にうまくやるべき仕事」「ほどほどタスク:必須だが、完璧でなくとも良い仕事」「余力タスク:やった方が良いが、失敗しても良い仕事」の三種類があり、OKRで設定するのは「全力タスク」です。目標設定しなかったタスクをしなくて良いわけではありませんが、70点で良い仕事を100点にすることは全体を見た時に戦力の分散や時間投資効率を落とすことになりマイナスです。

③ストレッチ
 本来のOKRの活用においては人事評価と結びつけないことでストレッチ目標を設定しやすくする仕掛けが施されています。そして、ストレッチ度も可視化します。達成の自信度を表現するのです。達成の自信度は50%だとか、70%だとか、ストレッチ度合いを状況によって使い分けます。例えば、新規事業の創出や企業黎明期は予測精度よりもスピードが重要です。ストレッチ度を高めて挑戦すべきです。一方で、成熟期に精緻なオペレーションを回す際には、予実ギャップを少なくする力も求められますので保守的になりがちです。保守的な目標ばかりだと組織力は劣化をするし、サービスの新陳代謝も進みません。そういう時には部分的にストレッチさせて挑戦する領域を設けることも有効です。
(④トラッキングについては明日以降で解説します)

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