昨今、機械化による失業率の増加が話題になっています。
人のする仕事の種類が変わってきていることは間違いありません。
これからの世界で活躍するために
今一度「人間力」というものを考え直してみたいと思います。
まず、教育分野の話題を少し紹介させて頂きます。
教育の成果を図るためには、その教育を受けた子供が成人し
活躍できたかどうかを検証する必要があり、足の長い研究になります。
現在明らかになってきている知見は10年20年前から取り組まれてきた研究の成果です。
その最近明らかになってきたこととして、
成功できるかどうかはIQなどの「知能」では決まらず、
欲求をコントロールする自制力や、
難しい課題をやり抜く力のような「気質」にあるという結論が出ています。
例えば、大学に入学する際には、IQは必要ですが、
合格という目的のために目先の欲求を退ける力や
継続して学習する気質がなければ合格できません。
現実には、大学受験は一発勝負に勝利すれば合格するという意味で、
IQの力で乗り越えられる場合があります。
そういう意味で、かつてはIQさえ高めれば、
子供を成功させることができるという調査結果もありました。
しかし、追跡調査をしていくと、「気質」に問題がある子供は卒業できていない、
ということが明らかになってきたのです。
長期的には気質の力が必要になるということです。
また、別の調査では、ある学校でIQテストをすると、
IQの高いグループ、中位のグループ、下位のグループに分かれます。
その子供たちに、「良い点を取ったらチョコレートをあげる」
という設定で試験を受けさせたところ、
上位・中位のIQは変わらなかったが、
下位のグループの点数が中位と同じになったということです。
これが何を意味するかというと、
「IQはあるのに、能力を発揮する心が伴っていない」ということです。
結果、「IQが低いと成功しない」という勘違いに繋がっていたといいうことです。
この「気質」は人間力を考える上での一つの視点だと思います。
「将来のために今を犠牲にできるか」という自制力には
短期的なものと長期的なものがあります。
短期的な例としては、チェスの話があります。
チェスの名手の指し手を見ていると、
「リスクを考慮して踏みとどまれる」という傾向があるそうです。
平凡なプレイヤーは、「良さそうな手」を見つけると、
その指したい欲求を押さえることができず反応してしまう(つい指してしまう)。
そして、そこから破れてしまうということです。
「言いたいことをぐっとこらえて相手の意見を聴く」など、
分かっているけどできていないことはないでしょうか?
長期的な事例は先ほどの受験の話ですが、
マネジメントにおいても「緊急性は低いが重要なことにしっかり取り組む」
ことが重要だという話に通じます。
欲求のコントロール法や仕組み化など
自制力を効かせるための工夫を施すことを含め、
成功を左右する要素なのだと思います。
「実行前に立ち止まって、施策を考えてみたり、計画を練ること」
「安易な方法に流れず、メンバーの成長を我慢して支えること」
などは気質抜きには難しい事です。
このようにビジネスの世界で成功するにも、
「知能」ではなく「気質」が大切であるという事例には事欠きません。
成功を左右する行動の中には、「費用対効果」を感じにくいが重要な行動があります。
「費用対効果」という概念は大切ですが、
「即効性」だけを求めると見過ごされてしまうこともあるということです。
どうでしょう。日常の活動は「気質」を伸ばすような取り組みになっているでしょうか?
一定の期間をかけて、一つのテーマにじっくり取り組むと成長を具現化できるものです。
「目の前の成果を出すこと」 だけでなく、「人間力を高める」ことも大事にされると
機械にとって代わられない本物の力が身につくのではないでしょうか?